105万年前 ~うさぎ座ゼータ~

この時期、『秋』の空には、明るい2星が輝きますが、『春』の空にもひとつ、とても明るい星が光っています。

うさぎとオリオン

うさぎとオリオン

『秋』の空にあるのは、接近を終えた いて座ゼータ・アスケラ、現在と変わらずに明るいエリダヌス座アルファ・アケルナル
季節が変わって『春』に見えるのは、将来、うさぎ座ゼータと呼ばれる、うさぎ座のおしりの星。

現在は70光年のかなたにあり、3.5等星の目立たない星、固有名もありませんが、この時代の太陽系までの距離は5光年、現在のケンタウルス座アルファとほとんど同じ距離まで近づき、光度は-2.1等星、現在のおおいぬ座アルファ・シリウスの倍近い明るさがありました。

うさぎ座は冬の星座。オリオン座の足元にある、明るい星がない地味なものですが、見慣れてくると、かわいらしいウサギの姿を描くことができます。猟師オリオンは、ウサギ狩りが大好きだったといいます。 灯台下暗し、獲物になってしまわないよう、オリオンの足元に隠れているようです。

そのツンとあがったおしりの星が、今回の主役、うさぎ座ゼータです。

恒星データ

Hipparcos
番号
バイ
エル
符号
赤径赤緯固有名
カタログ名
意味アルマゲスト名実視
等級
絶対
等級
スペクトル距離
(光年)
27288ζ Lep05h47.0m-14°49’  腰にある星3.551.89A2Vann70.2
データ出典: バイエル符号・等級・スペクトル・距離 Hipparcos 星表  絶対等級・独自計算  固有名・意味 星座の神話  アルマゲスト名 アルマゲスト

4星接近

この星もご他聞にもれず、太陽向点であるヘルクレス座のほうから現れます。1等星になるのは144万年前、27光年のころ。ヘルクレス座からへび座を通って、111万年前、うしかい座の足元を通過する頃は、明るさは-1.5等星、太陽系まで7光年になっています。

うさぎ座ゼータ

うさぎ座ゼータ

ちょうどこの頃、おとめ座アルファ・スピカ(1.0等星)、しし座アルファ・レグルス(2.3等星)、Hipparcos星表番号25240(-0.7等星)と、縦一列に並んでいるのが見られました。

4星接近

Hipparcos番号25240という星は、現在はオリオン座のベルトのすぐ西側にある6等星です。このころ、同じように太陽系に接近しており、うさぎ座ゼータ、アスケラにつぐ3番目の輝星でした。4星の接近、111万年前からすぐの108万年前ころに、太陽系に5光年まで接近、コップ座で-1.5等星まで明るくなっています。こちらのほうが動きが早く、うさぎ座ゼータを追い抜いて一足先にオリオン座のほうへ移動していきました。

ちなみに、現在の春の一番の輝星うしかい座アルファ・アルクトゥールスは、111万年前には450光年のかなたにあり、りゅう座で6等星、ようやくかすかにみえる程度です。

ロイヤル・スター

天の川から離れた『春』の星空は、いつの時代も明るい星は少ないのですが、この前後2万年ほどは、1等星3つ、2等星が1つ、角度で20度、腕を伸ばした手のひら ひとつ分くらいの広さに集まっていて、見事な眺めだったことでしょう。しかも、このあたりは太陽の通り道、黄道がすぐ近くを通っています。惑星や月も接近して、金星木星などが近くにある様子は、今のオリオン座のあたりのような賑やかさです。

それぞれの季節の、太陽の通り道の近くにある明るい星を季節の目印の星としてつかう、ということは、星座を作る元になったようです。アルデバラン、レグルス、アンタレスフォーマルハウトは、古代ペルシャで「ロイヤル・スター」と呼ばれていたとか。もし、この時代、111万年前に文明があれば、一年はこのあたりから始まったかもしれません。

その後

現在のシリウスとうさぎ座ゼータ。
現在はシリウスのほうが100倍明るい

うさぎ座ゼータは、天球上の移動速度をぐんぐん増して順調に太陽系に近づき、105万年前、しし座の足元でで最輝となります。-2.1等星、5.3光年。最接近後、ろくぶんぎ座うみへび座を横切り、遠ざかりながら現在の場所、うさぎ座までやってきます。65万年前には2等星となって、オリオンの右足の少し下に見えていたでしょう。

うさぎ座はオリオンの足元の地味な星座ですが、星の並びはなかなかよくできていて、オリオンから逃げようとしているかわいいウサギの姿を想像することができます。
空の暗いところで、うさぎ座を探してみてください。ピンとあがったおしりの星が、100万年前には、隣の明るい星シリウスよりもまぶしく輝いていた、というのも、変わらないようでいて、実は大きく変化している星空の様子を表しています。