29万年後 ~ヴェガ~

おりひめ星、ヴェガ。彦星、アルタイルとは天の川を隔てて輝きます。

ヴェガとアルタイル

ヴェガとアルタイル

七夕のお話では、とても勤勉だったふたりは、結婚したら仕事をしなくなり、天の川の両岸に引き離されて、年に一度だけ、天の川を渡ってのデートが許されます。

この伝説の道徳的視点や、情操教育という観点からすると、これは間違った知識の使い方だと常々思っており、実にどうでもいいことで大変無粋な話なのですが、皆さんもご存知の通り、ヴェガとアルタイル、この星の間は何光年も離れていて、当然ですが一晩で会う、ということはできません。

けれども、天球上ではどうだったのでしょうか。今は、天の川に引き離されてしまったふたり、伝説の通り、昔は近くで輝いていたのかもしれません。
二人の関係を調べる探偵のようで、いよいよ無粋な話、恐縮ですが、ヴェガとアルタイルの過去・未来を調べてみましょう。

恒星データ

Hipparcos
番号
バイ
エル
符号
赤径赤緯固有名
カタログ名
意味アルマゲスト名実視
等級
絶対
等級
スペクトル距離
(光年)
91262α Lyr18h36.9m38°47’ヴェガ落ちるわし耳にあるリラと呼ばれる星0.030.58A0Vvar25.3
97649α Aql19h50.8m08°52’アルタイル飛ぶわし後頭部にあって鷲とよばれる星0.762.20A7IV-V16.8
データ出典: バイエル符号・等級・スペクトル・距離 Hipparcos 星表  絶対等級・独自計算  固有名・意味 星座の神話  アルマゲスト名 アルマゲスト
ヴェガとアルタイル

ヴェガとアルタイル

太陽系からの距離をまず見てみると、ヴェガは25光年、アルタイルは17光年で、アルタイルのほうが半分くらいの距離にあります。ということは、アルタイルのほうが動きが速く見えるはずで、事実、アルタイルは現在から20万年間で、90度も星空の中を移動していきます。ヴェガはその3分の1くらい。どちらも、現在太陽系に向って来ており、これからますます明るくなる星たちです。

今から40万年前、ヴェガはヘルクレス座の左腕にあり、アルタイルはたて座にありました。ヴェガはすでに1.1等星ですが、アルタイルはまだ3等星。ちょっと不釣合いな感じです。そういえば、七夕伝説でも、おりひめは天帝の娘ですが、牽牛のほうはまじめがとりえだけれども地味な印象で語られますね。距離は角度で30度くらい、今よりも少しだけ近づいています。

ヴェガは天の川に沿って北上し、アルタイルは天の川を渡りながらみるみる明るくなっていきます。今から6万年前にはアルタイルも1等星の仲間入りをし、現在に至るのですが、ふたりの距離はだんだん開いていき、現在は角度で35度ほど離れています。この後も、ふたりは天の川の両岸を北上してだんだん明るくなります。

アルタイルは14万年後に太陽系に最接近、8.6光年でシリウスと同じくらいの距離です。絶対等級はシリウスのほうが1等星ほど明るいので、アルタイルは最輝で-0.7等星。アンドロメダの顔の隣で輝きます。

ヴェガはアルタイルから遅れること15万年、今から29万年後にケフェウス座カシオペヤ座の間で-0.8等星の最輝を迎えます。太陽系からの距離は17光年、現在のアルタイルとほぼ同じ距離、そこで、アルタイルと1等星ほど違いますから、やはり生まれの違いは大きいようです。その頃には、アルタイルはおうしの肩の上に移動しており、2星の間は90度も離れてしまいます。どうやら、このふたりは、伝説とは違って、会うことはないようです。

恋人は別にいた?

ヴェガとアルデラミン

ヴェガとアルデラミン

ヴェガは、ほとんど速度も明るさも変えずに、天の川を進みます。33万年後には、ケフェウス座の右腕の星「アルデラミン」と、0.5度、月1つ分ほどまで接近します。この頃のアルデラミンは1.6等星、ヴェガのほうが10倍ほど明るいのですが、どちらも白く輝く星で、見ごたえがあるでしょう。アルタイルとこうして二重星になればよかったのですが、残念。

しかも、ヴェガとアルデラミン、この後100万年先まで、15度以上離れることなく、同じ方向へ移動をしていきます。アルデラミンは60万年頃には1等星となり、明るさのバランスもそう悪くはありません。

ヴェガにとっての本当の彦星は、アルデラミンなのかもしれません。