136万年後 ~グリーゼ710~

グリーゼ710、この星は将来、太陽系に1光年まで接近するといわれている恒星です。

グリーゼ710

グリーゼ710

この星は、現在は夏の空、へびつかいが持っている蛇の星座、へび座エータの角度の1度ほど北にあって、明るさは9.7等星、太陽系との距離は63光年、肉眼で見ることはできません。絶対等級も8.2等星ほど、太陽とは約4等星違いますから、太陽の約40分の1の明るさです。スペクトル型はK7、明るさとスペクトル型から、太陽よりも小さい星だということが分かり、質量は太陽の半分程度と推定されています。

星の名前にある「グリーゼ」は、近傍星カタログの製作者Glieseのこと。グリーゼ近傍星カタログ番号710というわけです。

太陽系から近く、小さな固有運動量と大きな視線速度を持つところから、1946年にはアメリカの天文学者ヴィソツキーによって、約50万年後に太陽系に1パーセク以内に接近するのではないか、と考えられていたようです。
横方向の動きが少なく、近づく速度が大きいということは、つまりまっすぐこちらに向ってきている、ということですね。

恒星データ

Hipparcos
番号
バイ
エル
符号
赤径赤緯固有名
カタログ名
意味アルマゲスト名実視
等級
絶対
等級
スペクトル距離
(光年)
89825 18h19.8m-1°56’グリーゼ710  9.668.23K7V62.9
データ出典: バイエル符号・等級・スペクトル・距離 Hipparcos 星表  絶対等級・独自計算  固有名・意味 星座の神話  アルマゲスト名 アルマゲスト
グリーゼ710

グリーゼ710

最接近時の動き

今から100万年後まで、この星は肉眼で見えるようにはなりません。6等星として見えるようになるのは、105万年後、位置は変わらずへび座の中。太陽系までは14光年まで近づいています。その後もまっすぐに太陽系に向ってきますが、いかんせん暗い星、126万年後に5光年まで接近してもまだ4等星です。
2等星になるのは現在から132万年後、現在のわし座いるか座のあたり、そこからは、星空の中の動きもどんどん早くなり、135万年後には1等星台、距離も1.5光年、そしてそれから1万年後、今から136万年後には、とかげ座からアンドロメダ座のあたりで、太陽系から1.1光年のところまで接近します。

グリーゼ710はそのままの速さで太陽系のそばを通過し、最接近から6万年後、現在から142万年後には、太陽系から3光年しか離れていませんが、あっという間に3等星まで暗くなります。元々が暗い星なので、本当にすぐそばまでやってこないと明るくは見えない、ということがよく分かります。

太陽系への影響は?

太陽系から1光年のところまで近づくグリーゼ710、こんなに接近する星は、この200万年の間にはこの星だけです。昔の滅亡系SFでは、どこからか星がやってきて地球や太陽に衝突する、というテーマも取り上げられたものですが、この接近、太陽系にはどんな影響はあるのでしょうか。

滅亡系SF好きな方には申し訳ない(?)のですが、まれに見る接近とは言っても、グリーゼ710と太陽とは1光年も離れています。この星と太陽や地球が衝突したり、この星の引力で地球や惑星の軌道が変わってしまったりといった、大きな影響を与えるというのは考えづらいところです。けれども、逆に、まったく影響がなく安心なのか、というと、そうでもなさそうなのです。

太陽から1光年のあたりは太陽系の最外縁部、彗星の元になる「オールトの雲」があると考えられています。太陽系を球状に取り囲んでいるオールトの雲から、他の天体の引力の影響で軌道を乱され、太陽に向って落ちてきたものが、ほうき星、彗星。ということは、グリーゼ710がそのそばをすぐに通過することでオールトの雲が乱され、彗星が太陽に向けてたくさん落ちてくる、という可能性も高くなります。彗星が地球に衝突する小説や映画もありますが、それが現実になるかもしれないのです。恐竜が絶滅したのは、隕石か彗星が地球に衝突したため、と考えられていますね。

彗星がどこからどのようにどれくらい来ているのか、ということ、他の恒星との接近頻度やその距離は、地球滅亡云々ということ以前に、彗星の進化を考える上でとても重要なことで、こういった研究をしている天文学者もいます。その結果では、グリーゼ710の接近で、200万年間に約240万個の新しい彗星が地球軌道を横切ることになりそうとのこと。現在、地球軌道を横切る長周期彗星数に比べて50%ほど増加しそうだ、ということです。増えるとはいっても、何倍、何十倍というわけではないのですね。これなら、彗星が地球に衝突して地球滅亡、という可能性もそんなに大きくはならないでしょう。

グリーゼ710のような、恒星と太陽系との接近は、数百万年に1度は起こると考えられるようですが、生物の大量絶滅は、それよりも10倍以上、数千万年といったタイムスケールで起きているようです。恒星が接近したからといって、必ず大規模な絶滅がある、というわけではないのですね。生命が生まれてから40億年、恐竜や三葉虫など、大規模な絶滅もありましたが、現在もこうして地球に生命が満ちているということが、大きな彗星や隕石の衝突がそうそうあるわけではないという、何よりの証拠だと思います。

ひとつ気になっているのは、太陽にオールトの雲があるのなら、グリーゼ710にもあるのでは? ということ。最接近の頃には、太陽系の彗星の他に、グリーゼ710からの彗星がやってくるのかもしれません。