天文学で使われる距離の単位

「距離を測る」というテーマで、天体までの距離の測り方を紹介してきました。ここで、天文学で使う距離の単位をまとめておきます。

光年(Light Year)

宇宙の距離の単位としてポピュラーなものです。宇宙でいちばん速い光が1年間に進む距離、9,460,730,472,580.8km。身近な「光」と「1年」という単語からでしょうか、宇宙の距離の単位としてはいちばん知られていると思います。

上の数字は、国際天文連合が1976年に決議した光の速さから決まったもの。これをどうやって求めたか、簡単に紹介しましょう。

光の速さは、299,792.458km/s(真空中)と定義されています1。これは定義なのでこのまま使いますが、問題は「1年」という長さがいろいろとあることです。

普段、私たちは1年を365日としています。でも、4年に一度うるう年が入り、366日の年もあります。どちらを1年の長さとしたらよいでしょうか。4年に1度1日が入るから1日を4で割って、1年は365.25日とするのもありです。
しかも、私たちの使っているカレンダーでは「西暦が100で割り切れて400で割り切れない年はうるう年にしない」という決まりがあります。もちろんこれは、意地悪をしているわけではなく、季節とカレンダーがずれていってしまわないようにです。西暦2000年はうるう年でしたが、2100年はうるう年ではないのです。

これまでの1年は、私たちが使っているカレンダーでの話でしたが、このほかにも「恒星年2」やら「太陽年3」やら「近点年4」やらといった1年があり、1光年の距離を求めるのに、どの1年を使えばいいのか、困ってしまいます。

1光年の長さを決めるに当たり、国際天文連合では「1年=365.25日」と定義しています。この長さは「ユリウス年」と呼ばれ、現在の暦「グレゴリオ暦」の前にヨーロッパで使われていた暦での1年です。

光の速さは、299,792.458km/s、1年は365.25日としますから、1年を秒単位にそろえて31,557、600s(=365.25×24×60×60) これに光速をかければ、9,460,730,472,580.8kmという数字が出てきます。9兆4607億3047万2580.8km、これが、1光年のkm単位で表した長さ。長いでしょうか、思ったよりも短いと感じるでしょうか。

ちなみに、1日という単位もいろいろな長さがありますが、国際連合が1光年を決めるときに使う1日は24時間、86,400秒です。時間の天文単位でもあります。

天文単位( Astronomical Unit )

天文単位は、もともとの定義は太陽と地球の平均距離を1とした単位。149,597,870.691km。この単位は、太陽系の天体間の距離を求めるのに用いられます。

私たちもよく目にしていることですが、遠いものはゆっくり、近いものは速く動いているように見えます。古代ギリシャで惑星の運動を観察しモデル化するとき、惑星の天球を進む速さから、動きの速い天体は地球に近く、遅いものは遠いだろう、と考えられました。そこから、惑星は距離の違う同心円の軌道を回っている、というモデルが作られたのです。

このモデルは幾何学の知識を使って構築されていますから、惑星までの距離は身近な具体的な数字ではなく、地球の直径の何倍、地球と月との距離の何倍、という単位で表されます。

古代ギリシャのアリスタルコスは、半月は、太陽が月を真横から照らしているのを見ている、と正しく考えました。太陽と月は直角になっているのだから、月と太陽との角度を測れば、直角三角形から太陽-地球間、地球-月間の距離を求めることができる、というわけです。距離が求められる、といっても、身近な単位で、というわけではありません。太陽までは地球-月間の何倍、という数字。太陽・月・地球が作る三角形の辺の比として求まるのです。
古代ギリシャ以降も、太陽系モデルの惑星間の距離は比として示されます。その基本単位は、太陽と地球との距離、とするのが自然な流れでしょう。それが、天文単位というわけです。

身近な単位でその正確な距離を示すことは、距離が遠すぎて観測技術的に難しいこと、そして、太陽系をモデル化した一番重要な理由である、惑星の位置を計算するためには不要であったことから、19世紀までできませんでした。ハレー彗星で有名なイギリスの天文学者ハレーは、1761年に起こる金星の日面通過を離れた2点で観測することで、金星、太陽の視差を求めることができ、それぞれとの距離が直接求められると指摘しました5。ハレー彗星が楕円軌道を描くことは計算できても、太陽地球間の距離は正確にはわかっていなかったのです。

国際天文連合が定義し、現在用いられている天文単位という距離は、これまでの「太陽-地球間の距離」という定義とは別で 「質量が無視できる小さな粒子が365.2568983日を公転周期として太陽の周りを円運動する、その距離」というものです。これは、天体力学独自の単位だった天文単位を、私たちに身近な国際単位系を用いて定義したもの、と言えると思います。
国際天文連合では、この値を導くために使われる式で必要な「1日」と「太陽の質量」も、天文単位という名前をつけて、定義しています。

 時間の天文単位 86400        秒  = 1日
 質量の天文単位 19891×10^31  kg = 1太陽質量
 長さの天文単位 149597870691 m

「秒」と「kg」、「m」は国際単位系です。
普通、天文単位といえば、長さの天文単位を指します。

パーセク( parsec )

パーセクは、年周視差が基本となる距離の単位です。基線を1天文単位とした時の視差が角度の1秒になる距離をいい、約30兆8570億Km、約3.26光年、または約20万6千天文単位です。年周視差を角度の秒単位で求めれば、パーセクはそれの逆数となるため、観測データが扱いやすく、天文学者の間ではよく使われる単位です。
パーセク(parsec)という単位名は、視差(parallax)と角度の秒(second)の合成語で、毎秒(per second)の略ではありません。私も最初は後者だと思っていました。定義が単位名になっているのですね。

参考:国際天文連合Webサイト Measuring the Universe

  1. 第16回国際天文連合(IAU)総会議決による。国際単位系(SI)のメートルは「光が1/299792458秒間に進む距離」と定義されています(1983)。
  2. 恒星年=恒星を基準にした1年    =365日6時間09分9.764秒
  3. 太陽年=分点、至点を基準にした1年=365日5時間48分45.184秒
  4. 近点年=近日点を基準にした1年 =365日6時間13分52.570秒。この3点は天文年鑑2012年版より
  5. キャプテンクックと南の星 P66