永年視差と統計視差

年周視差では、地球~太陽間を基線として、直接恒星までの距離を求めることができました。遠くの星までの距離を測るため、さらに基線を延ばすことは可能でしょうか。

永年視差

視差によって求めることができる距離は、基線が長くなればなるほど正確になります。年周視差は、地球の公転による位置変化を基線として、恒星までの距離を求めました。地球は太陽の周りを回っていますから、私たちが地球上にいる限りこれ以上長い基線は準備できないように思えます。

もっと長い基線を作るとしたら、地球を飛び出して、宇宙空間と地球との距離を基線にする方法でしょうか。年周視差の基線は、地球・太陽間の距離、1億5千万km。それよりもいい精度で視差を求めるには、その基線の長さを超える、ずいぶんと遠くまで行かないと意味がありません。前回ご紹介した、JASMINEやGaiaは基線を延ばして観測するのではなく、空気のない宇宙空間で高性能の望遠鏡を使い、観測精度を向上させるという計画です。

現在の技術では、宇宙空間に何十億キロという基線を引くのは難しそうですが、意外にも、地球上からの観測だけで、そういったものを準備することができます。

永年視差

地球が宇宙空間を移動しているように、太陽も、太陽系のすべてをつれて、太陽向点と呼ばれるヘルクレス座の1点に向かって約15km/sの速度で移動しています。その太陽の運動による位置の変化を基線として視差を求めればよいのです。これを、永年視差と呼んでいます。
たとえば、10年の間隔をあけて同じ星を観測することで、約50億kmという基線上の視差を求めることができます。年周視差に比べて10倍以上の精度です。

この方法の問題点は、太陽が動いているように、星たちも宇宙空間を運動していることです。10年間に、観測した星そのものも宇宙空間を移動し、太陽と恒星の運動をあわせた結果が視差として観測されますから、そのままでは、ひとつひとつの星に対して正確な距離は求めることができません。

永年視差は、全天の個々の星の距離を求めることはできませんが、同じ運動をしているであろう星団などのグループに属する星たちの平均距離を求めることに使われています。

統計視差

逆に、星たちの運動からその距離を求める方法もあります。星たちが宇宙空間を同じ速度で移動しているのなら、近い星は早く、遠い星ほどゆっくり動きます。実際には、星はそれぞれがバラバラに動いていますから、この方法も永年視差と同じで、それぞれの星までの距離を求めることはできません。同じ距離にあるであろう星団などのグループの固有運動の平均を視差として、距離を求めることができます。これは、統計視差と呼ばれます。統計視差も、永年視差と同じ程度の精度で、星団までの距離を求めることができます。

年周視差、永年視差や統計視差でも、観測精度と理論上の問題から、現在のところは数千光年以上かなたの星たちの距離を求めるのは難しいようです。もっと遠い天体の距離を求める別のアプローチが必要なのですね。

[天体物理学入門 P40-48]